回折時の電波伝搬

1.自由空間伝搬損失(Γ0
   Γ0=(4πd/λ)
     d:距離 λ:波長(299.8/f(MHz) )(m)

2.スパン損失(Ls)
   送受信アンテナが等方性アンテナでないとき
送信側の出力端子の電力(Pt)と受信側の入力端子の電力(Pr)との間の
伝送損失はスパン損失(Ls)と呼ばれ、次式で表されます。
  Ls=Pt/Pr=(Lt・Lr/(Gt/Gr))・Lo・X
    Pt    :送信機出力
    Pr    :受信機入力
    Lt,Lr :送信および受信給電系損失
    Gt,Gr :送信および受信アンテナ利得
    Γ   :伝搬損失
    X    :アンテナ効果(主ビームとのずれによる減衰)

3.実効伝搬損失(Γe)
   電波伝搬は自由空間伝搬損失(Γo)に大地の影響による損失
 が加わり、またアンテナに対する大地の影響も加わる。
 したがって、実際の伝搬損失は自由空間損失にこれらの影響を
 加味したものとなるが、ややこしくなるのでここでは便宜上、
     Γe=Γo とする。

  これらの概念を下図に示す。

    
        電波伝搬の概念を示すレベルチャート

4.フレネルゾーン
   送信点(T)から受信点(R)に向かう平面波の途中、受信点から(b)の
 距離にある波面上の各点からRに対する効果は波面上の各点がRに及
 ぼす2次波の効果の総和に等しいとされている。
   送信点(T)と受信点(R)を結ぶ直線上の点(C)を含む波面上において
 R,C間の距離を(r)とすると、rより、λ/2,2λ/2,3λ/4,・・・・mλ/2
 だけ遠い点の軌跡は同心円を描く。このλ/2ずつづれた波面は互いに
 受信点Rに対し、反対の効果を及ぼす。また、1つおきのものは互いに
 強め合う効果をもたらす。
  第一のゾーンの半径をr1とすると
   (b+λ/2)=b+r1
    r1=bλ+λ/4   λ/4<bλ,λ/4<r1
    r1=√(bλ)  
  第二ゾーン、第三ゾーンの半径をr2,r3とすると、同様に
    r2=√(2bλ),r3=√(3bλ)
  第mゾーンの半径は
    rm=√(mbλ)   となる。
 それぞれのゾーン半径r1,r2・・に対応する円の面積はπbλ、2πbλ、
 3πbλ・・・mπbλと近似できる。したがって、 円環状の各ゾーンの
 面積はπbλとなる。(実際は、外側のゾーンに行くに従って、上記の近
 似分だけ少しずつ大きくなる。)

 下図のようなゾーンが考えられる。
   平面波のゾーン
それぞれのゾーンが受信点に及ぼす効果は、その面積に比例し、受信
 点にいたる距離に反比例する。また半径の増大に伴い角度の補正を受
 ける。
  波面に垂直な方向(受信点R方向)を基準とした任意方向の2次波の
 効果は次式に比例して減少する。
    (1+COSθ)/2
   従って、正面方向では1、θ=±90°では1/2、後方θ=180°
では0になる。
  m1とm2、m2とm3・・・など、隣り合うゾーンは互いに反対の作用を
 及ぼす各ゾーンの合成効果は以下のようになる。
 S=m1ーm2+m3−m4・・・・・・
  =m1/2+(m1/2−m2+m3/2)+(m3/2−m4+m5/2)+・・
 各ゾーンの物理的意味から、かっこ内はそれぞれ0になるので
 S=m1/2  に近似できる。
  つまり、全波面が及ぼす合成効果はゾーン間の打ち消しのために
 第1ゾーンだけの効果の概ね1/2になる。
 第1ゾーンのみの効果は全波面の(無障害)の全効果の2倍になる。

  上記の考察から、第1ゾーンのみの伝搬では無障害伝搬の2倍
 (+6dB)になる。次に第2ゾーンを含めた伝搬では最初の極小値を
 とる。これを、繰り返しながら、自由空間伝搬に収束する。

   回折損失を考えるとき、障壁により遮られるゾーンにより信号強度
 が変動する。第1ゾーンが隠れるまで障壁の高さがあがると信号は
 急激に低下する。これは上記で述べた第1ゾーンが隠れるためである。
 この回折領域について以下に記す。

5.回折損失
  回折のある伝搬路の受信電界強度をEr、回折の原因が無いときの電界
 強度をEoとすると、回折係数Zは Z=Er/Eo 定義される。
  切り立った直線のエッジと電波通路のクリアランスをhcとすると、
 クリアランス係数uは
    u=hc/r1   で表される。h1の符号は見とおし内を+とする。
 一般に第mフレネルゾーンの半径rmは
    rm=r1・√m
 となり、第mフレネルゾーンに接する障害物のクリアランス係数は
    u=±√m  となる。
  受信点において利用できるエネルギーは電界強度の2乗に比例する。
 回折のない電界強度をEo、回折のあるときの電界強度をErとすれば、
 Eo/Erは回折による電力損失比になる。
  回折損失Ldは Ld=Eo/Er=1/Z
         Ld(dB)=−20logZ(dB)
 となる。
  ナイフエッジが、第1、第2、第3のフレネルゾーンに接するとき、uは
 1、√2、√3になるので、
   Z1=1.15   (+1.2 dB)
   Z2=0.89   (−1.05dB)
   Z3=1.1    (+0.8 dB)   となる。
  奇数次のフレネルゾーンに接するときは利得、偶数次のフレネルゾーン
 に接するときは損失になる。
 第1フレネルゾーンを完全に隠す領域(u<−1)では電界強度は|u|に
 反比例して減少する。近似式は以下のとおりである。
         Z=|1/(2πu)|
     Ld(dB)=20log|u|+16  (dB)

   参考:マイクロウェーブ電波伝搬 コロナ社 (渋谷茂一 執筆、黒川廣二監修)

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