電波防護指針

平成11年10月1日から電波法施行規則の一部が改正され、無線局の開設者に、人が通常出入りする場所で無線局から発射される電波の強さが基準値を超える場所がある場合に、柵などを設けて一般の人々が出入りできないようにすることが求められます。但し、施行の際にすでに免許を受けている無線局は免許の有効期間が満了する日まで経過期間が認められます。
 適用を除外される無線局は平均電力が20mW以下の無線局の無線設備、移動する無線局の無線設備、非常事態が発生または発生するおそれのある場合において臨時に開設する無線局の無線設備です。
 したがって、移動する無線局の無線設備には適用されません。アマチュア無線の無線局は一般に50W以下は移動局として免許を受けることができますので、よほどの酔狂な方(失礼!)以外は50W以下で固定する無線局として免許を受けられている方はいないと思います。

電波の人体に対する影響

人体が強い電波の環境にさらされた場合、体温の上昇や神経系統を刺激するなどの症状が報告されています。また、ラットに強力な電波を照射し続けると最終的には死亡したなど、物騒な実験結果も報告されています。特に、水分の多い眼球や生殖器等に対する影響も多大であると考えられています。これらのことから国際非電離放射防護委員会(ICNIRP)は世界保健機構(WHO)とともに電波防護指針を策定し、指針以下の電波による人体に対する悪影響はないとされています。

電波の人体に対する影響

 指針には、電波に対しての知識や危険性などの認識、防護策の知識がある人間に対する基準値と、そうでない一般の人間に対する基準値が設けられています。一般のアマチュア無線局の周辺には隣家や道路があり、電波を発射しているかどうかもわからず生活し、通行しています。したがって、基準値は値としては厳しい一般環境に対する基準値が適用されると思います。また、無線局を開設している家の住人には専門的知識のある人間に対する基準値が適用されると思いますがこの点については定かではありません。
 基準値は周波数帯によって、値が異なります。下表を参照願います。

 周波数  f
 電界強度の実効値

 E(V/m)

磁界強度の実効値

H(A/m)

電力束密度
S(mW/cm
 10kHz  〜  30kHz
275
72.8

 30kHz  〜  3 MHz
275
2.18/f

 3 MHz  〜  30MHz
824/f
2.18/f

 30MHz  〜  300MHz
27.5
0.0728
0.2
 300MHz 〜  1.5GHz
1.585√f
√f/237.8
f/1500
 1.5GHz 〜  300GHz
0.163
0.163
1

電波の強さ(平均時間6分間)基準値

上記の表に示した電界強度、磁界強度、電力束密度のどれかひとつでも基準値を超えている場所には、人が立ち入らないようにする必要があります。また、6分間の平均とありますが、ラグチューやDXの連呼などの場合もあり、平均電力と規定されていますが変調方式だけを考慮するほうが妥当のように思います。

 

アマチュア無線での適用とJARLの簡易検討方法

 強い電波(電界強度、磁界強度、電力束密度)による人体への影響に関しては未だに研究・調査段階にあると思います。早い段階で規制を設けることは後になって後悔を招くよりも賢明のように思います。JARLでは電波防護指針に基づく電界強度の簡易検討方法を紹介しています。しかし、これはアンテナから何mの距離でどうこうと言ったたぐいのものです。小生の自宅敷地は広大なものではないため、HFのダイポールの端末は隣家との境界近傍です。ダイポールの端末はもっとも電圧の高い部位に当たります。JARLの言うアンテナと人体の距離は具体的にアンテナのどこと人体の距離を言うのでしょうか?
 小生のアンテナは2階の屋根の上のルーフベースに設置しています。したがって、アンテナは結構な打ち上げ角を持っているように思います。これを安易に指針より厳しい扱いであるとの理由でアンテナ利得をそのままで適用するのも如何なものかと思います。特にVHF帯域は指針の基準値もきつく、満足するには広大な敷地、高いタワー、QRPといった条件で運用形態事態を見直すことも必要かと思います。既設の局には次回の免許時まで猶予されるとのことですが、VHF帯でのハイパワー、高利得アンテナの局は実測等による確認も必要になるかも知れません。

 

当局における50MHzでの電束密度

 当局における周辺の電束密度をダイポールアンテナとスペクトラム・アナライザーを用いて測定しました。地上や隣家2階の窓あたりでも防護指針は余裕をもって満足できていました。

   当局における50MHzでの電束密度

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(2000.3.7更新)